流体力学において重要な概念のひとつが「層流」と「乱流」です。配管設計や化学工学、さらには医学や空調など幅広い分野で登場する基本ですが、その違いを正しく理解している人は意外と少ないかもしれません。
この記事では、層流と乱流の特徴・判定方法をわかりやすく解説し、さらに実際の応用事例まで紹介します。
目次
層流と乱流の基本的な違い
層流(Laminar flow)

- 流体の分子が規則正しく層をなして流れる
- 流れは滑らかで、速度分布は放物線状
- 摩擦損失が小さいが、混合や拡散は起こりにくい
乱流(Turbulent flow)

- 流体の分子が不規則に渦を巻きながら流れる
- 速度分布はほぼ一様に近くなる
- 摩擦損失は大きいが、混合が活発で熱・物質移動が促進される
レイノルズ数による判定
層流か乱流かは レイノルズ数(Re) によって判定できます。
\(Re = \frac{ρ v D}{μ}\)
- ρ:流体密度
- v:流速
- D:代表長さ(通常は管径)
- μ:粘度
🔹 判定基準
- Re < 2,000 → 層流
- 2,000 ≦ Re ≦ 4,000 → 遷移領域
- Re > 4,000 → 乱流
🔧レイノルズ数計算ツール
流体の密度・粘度一覧について
圧損計算を行う際には、流体の密度や粘度が重要なパラメータとなります。
本ツールでは代表的な流体を選択できるようにしていますが、より多くの流体や数値を確認したい場合は、下記の記事をご参照ください。
圧損計算と合わせて参照することで、実際の条件に近い値で計算でき、より正確な結果が得られます。
応用事例
1. 配管設計
- 給水管・蒸気配管 → 実用的な流速では多くが乱流
- 小径・低速流れ → Re が小さく、層流になる場合もある
2. 医学(血流)
- 大動脈:流速が高く、乱流寄り
- 毛細血管:管径が小さく、層流に近い
3. 化学工学
- 撹拌槽や反応器 → 乱流で混合を促進
- 膜分離やマイクロチャンネル反応器 → 層流の特性を利用
4. 空調・送風
- ダクト内の流れ → 多くは乱流
- クリーンルーム → 層流を人工的に作り出し、粉塵を効率的に押し流す
まとめ
- 層流:規則正しい流れ、摩擦損失小、混合しにくい
- 乱流:渦を伴う流れ、摩擦損失大、混合しやすい
- 判定は レイノルズ数 が目安(Re<2000で層流、Re>4000で乱流)
- 配管設計、医療、化学工学、空調など、幅広い分野で利用されている
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