はじめに
流体力学や伝熱計算を行うときに欠かせないのが、密度(ρ)と粘度(μ, ν) の値です。特にレイノルズ数の判定、配管の圧損計算、ポンプ動力の見積もりでは、流体の物性値を正確に把握することが重要です。
このページでは、代表的な液体・気体の密度と粘度を20℃・1気圧基準で一覧表にまとめました。設計・計算の参考にご活用ください。
密度・粘度とは?
密度ρとは
密度(ρ, ロー)は、単位体積あたりの質量を表す物性値で、単位はkg/m³です。
密度が大きいほど同じ体積でも重く、流れに大きな慣性が生じます。配管の圧損計算では動圧 の形で現れ、密度が大きいほど圧損が大きくなります。また、レイノルズ数 の分子にも密度が入るため、同じ流速・管径でも密度が大きい流体ほどReが大きく(乱流になりやすく)なります。
粘度μ(動粘度ν)とは
粘度(μ, ミュー)は流体の「ねばり強さ」を表す物性値で、単位はPa·s(パスカル秒)です。粘度が高いほど流れに対する抵抗が大きく、同じ条件でも圧損が変わります。
実際の計算でよく使われるのが動粘度(ν, ニュー)で、粘度を密度で割った値です。
レイノルズ数は動粘度を使うと と書けます。粘度μと動粘度νは変換できるので、どちらか一方が分かれば計算できます。
液体と気体で粘度はどう違う?
液体と気体では粘度の大きさと温度依存性が正反対です。
液体の粘度: 液体の粘度は、分子間の引力(凝集力)が流れを妨げることで生じます。温度が上がると分子運動が活発になり凝集力が弱まるため、温度上昇とともに粘度は低下します(水・油・グリセリンなど共通)。
気体の粘度: 気体の粘度は、分子間の衝突・運動量交換によって生じます。温度が上がると分子運動が活発になり衝突が増えるため、温度上昇とともに粘度は増加します。液体と逆方向であることに注意が必要です。
また、下の表を見ると、気体の粘度は液体の1/100〜1/1000程度であることが分かります。これは気体の分子間距離が液体より大きく、分子間の引力がほぼ無視できるためです。
代表的な流体の物性値一覧(20℃, 1atm)
液体の密度・粘度
| 流体 | 密度 ρ [kg/m³] | 粘度 μ [10⁻³ Pa·s] | 動粘度 ν [10⁻⁶ m²/s] |
|---|---|---|---|
| 水 | 998 | 1.00 | 1.00 |
| 海水 | 1025 | 1.08 | 1.05 |
| エタノール | 789 | 1.20 | 1.52 |
| メタノール | 792 | 0.59 | 0.74 |
| グリセリン | 1260 | 1490 | 1183 |
| 灯油 | 820 | 1.64 | 2.00 |
| 軽油 | 830 | 2.50 | 3.01 |
| ガソリン | 740 | 0.60 | 0.81 |
| トルエン | 867 | 0.59 | 0.68 |
| アセトン | 791 | 0.32 | 0.40 |
| ベンゼン | 876 | 0.65 | 0.74 |
| プロピレングリコール | 1036 | 58 | 56 |
気体の密度・粘度
| 流体 | 密度 ρ [kg/m³] | 粘度 μ [10⁻³ Pa·s] | 動粘度 ν [10⁻⁶ m²/s] |
|---|---|---|---|
| 空気 | 1.205 | 0.0181 | 15.0 |
| 酸素 O₂ | 1.331 | 0.0205 | 15.4 |
| 窒素 N₂ | 1.165 | 0.0179 | 15.4 |
| 二酸化炭素 CO₂ | 1.842 | 0.0147 | 7.98 |
| 一酸化炭素 CO | 1.165 | 0.0172 | 14.8 |
| アンモニア NH₃ | 0.769 | 0.0098 | 12.7 |
| 水素 H₂ | 0.0899 | 0.0089 | 99.0 |
| ヘリウム He | 0.166 | 0.0196 | 118 |
| メタン CH₄ | 0.668 | 0.0110 | 16.5 |
| プロパン C₃H₈ | 1.87 | 0.0083 | 4.44 |
| ブタン C₄H₁₀ | 2.48 | 0.0085 | 3.43 |
| エチレン C₂H₄ | 1.178 | 0.0093 | 7.89 |
| アセチレン C₂H₂ | 1.174 | 0.0100 | 8.52 |
| 水蒸気 H₂O(g) | 0.804 | 0.0130 | 16.2 |
温度・圧力が変わるとどう変わる?
上記の値は20℃・1気圧での参考値です。実際の設計では温度・圧力条件が異なることが多く、特に以下の点に注意が必要です。
密度の温度・圧力依存性
- 液体の密度: 温度が上がるとわずかに減少(水は4℃で最大密度)。圧力依存性は小さい
- 気体の密度: 温度・圧力に大きく依存(理想気体の状態方程式 で計算可能)
粘度の温度依存性
- 液体: 温度上昇で粘度は大幅に低下(水の粘度は20℃で1.00×10⁻³ Pa·s、80℃では0.35×10⁻³ Pa·s程度)
- 気体: 温度上昇で粘度はやや増加
正確な設計・解析にはJSMEやNISTのデータベース等を参照することを推奨します。
物性値を使った計算例
一覧表の使い方の例として、空気を内径50mmの円管に流速5m/sで流す場合のレイノルズ数を計算してみます。
- 空気の密度: ρ = 1.205 kg/m³
- 空気の粘度: μ = 0.0181×10⁻³ Pa·s
- D = 0.05 m, V = 5 m/s
Re > 4,000なので乱流と判定されます。このように、一覧表の値を圧損計算やレイノルズ数判定にすぐ活用できます。
密度・粘度換算ツール
20℃・1気圧以外の条件(高温・高圧など)での密度・粘度が必要な場合は、以下の換算ツールをご活用ください。


