はじめに
流体工学や熱流体の計算では、圧損計算・レイノルズ数判定・ポンプ動力見積もりなど、あらゆる場面で流体の密度ρと粘度μが必要になります。しかし教科書や一覧表に載っている値は多くが20℃・1気圧(標準状態)のものです。
実際の設備では高温の油・高圧の配管・冬と夏で条件が変わる空調システムなど、標準状態と異なるケースが多く、そのたびに正確な物性値を調べるのは手間がかかります。このページでは、温度・圧力を入力するだけで密度・粘度を自動計算するツールを提供するとともに、背景にある計算式を解説します。
なぜ温度・圧力で密度・粘度は変わる?
密度の温度・圧力依存性
密度は「単位体積あたりの質量」ですが、温度が上がると分子の熱運動が活発になり体積が膨張するため、同じ質量でも体積が増えて密度は低下します。一方、圧力が上がると分子が押し縮められて体積が減り、密度は増加します。
気体ではこの温度・圧力依存性が非常に大きく、100℃の空気の密度は20℃の空気の約80%程度になります。液体(水)では気体ほど大きくありませんが、100℃では20℃の約96%程度まで密度が低下します。
粘度の温度依存性
液体と気体では、温度による粘度の変化の方向が逆になります。
- 液体: 温度上昇で粘度は低下します。分子間引力が弱まり、流れに対する抵抗が減るためです。水の粘度は20℃で1.0×10⁻³ Pa·sですが、80℃では約0.35×10⁻³ Pa·sと3分の1以下になります。
- 気体: 温度上昇で粘度は増加します。分子運動が活発になり分子間の運動量交換が増えるためです。
粘度は圧力依存性が比較的小さいため、通常の工業的な圧力範囲では温度のみを考慮することが多いです。
密度の計算式
気体の密度
気体の密度は、理想気体の状態方程式を変形した次の式で求められます。
- :圧力 [Pa]
- :分子量 [kg/mol](空気: 0.02897、CO₂: 0.04401など)
- :気体定数 = 8.314 [J/(mol·K)]
- :絶対温度 [K](T = ℃ + 273.15)
この式から、温度が2倍(絶対温度)になると密度は半分、圧力が2倍になると密度も2倍になることが分かります。
液体(水)の密度
液体の密度は圧力による変化が小さいため、温度依存の線形近似を採用しています。
\(\rho(T) \approx \rho_{ref} \left[ 1 – \alpha (T – T_{ref}) \right]\)
- \(\rho_{ref}\):基準温度での密度
- \(\alpha\):体膨張係数
- T:換算対象の温度
- \(T_{ref}\):基準温度
粘度の計算式
気体の粘度
気体の粘度は サザーランドの式 を用いて温度依存を計算しています。
\(\mu(T) = \mu_{ref} \left(\frac{T}{T_{ref}}\right)^{3/2} \frac{T_{ref} + S}{T + S}\)
- \(\mu(T)\):温度 T での粘度[Pa・s]
- \(\mu_{ref}\):基準温度での粘度[Pa・s]
- S:サザーランド定数
- \(T_{ref}\):基準温度[K]
- T:絶対温度[K]
気体の粘度は温度が上がると増加します。
液体の粘度換算
液体の粘度は、温度依存が大きいため アレニウス型の近似式 を採用しています。
\(\mu(T) = A \exp\left(\frac{B}{T}\right)\)
- A, B:流体ごとの定数
- T:絶対温度
温度が上がると分子の運動が活発になり、液体の粘度は大きく低下します。
ツールの使い方
入力項目の説明
| 入力項目 | 説明 |
|---|---|
| 流体 | 空気・水・CO₂・N₂・O₂など選択 |
| 温度 | 計算したい温度 [℃] |
| 圧力 | 計算したい圧力 [kPa または MPa] |
計算結果の見方
計算ボタンを押すと以下の結果が表示されます。
- 密度ρ [kg/m³]: 入力した温度・圧力条件での密度
- 粘度μ [Pa·s]: 入力した温度条件での粘度
- 動粘度ν [m²/s]: μ/ρで計算した動粘度(レイノルズ数計算に直接使用可)
温度を変えながら計算することで、「この流体は何℃まで上がると密度がどう変わるか」といった感度確認に使えます。
🔧密度・粘度換算ツール
計算例
空気を100℃・0.2 MPa(200 kPa)の条件で配管に流す場合の密度・粘度を計算してみます。
密度(理想気体の状態方程式より):
20℃・1気圧の空気(1.205 kg/m³)と比べると、高圧のため密度は約1.6倍になります。
粘度(サザーランドの式より):
\( \mu = 2.18 × 10^{-5} Pa \cdot s \)
20℃( Pa·s)と比べて約20%増加します。気体は温度上昇で粘度が増えるため、高温条件では注意が必要です。
このような条件変化を手早く確認するために、上記のツールを活用してください。
まとめ
- 密度・粘度は温度や圧力で大きく変化する
- 気体は理想気体式やサザーランド式で近似可能
- 液体はデータベースや経験式を用いることが多い
- 本記事のツールを使えば、簡単に換算計算が可能

