流体力学や配管設計において、静圧と動圧の理解は不可欠です。これらは単に圧力の種類の違いだけでなく、圧損の計算や流体のエネルギー評価にも深く関わっています。
目次
1. 静圧とは
静圧(Static Pressure)は、流体が持つ運動によらない圧力のことです。流体が配管内で静止していても存在する圧力で、配管壁にかかる力として感じることができます。
- 単位:Pa(パスカル)、kPaなど
- 計測方法:圧力計やマノメータ
- 配管設計では、配管やダクト内の圧力損失の基準値として使用されます
2. 動圧とは
動圧(Dynamic Pressure)は、流体の運動エネルギーに相当する圧力です。流速 V がある流体が持つ圧力で、以下の式で表されます。
\(p_\mathrm{d} = \frac{1}{2} \rho V^2\)
- \(\rho\):流体密度 [kg/m³]
- V:流速 [m/s]
動圧は、配管内で流体が高速で流れるときに増加します。圧損計算では、流速の変化が圧力損失に直結するため、重要な指標です。
3. 全圧(圧力の総和)
流体が持つ圧力の総エネルギーは、静圧と動圧の和として表されます。
\(p_\mathrm{t} = p_\mathrm{s} + p_\mathrm{d}\)
- \(p_\mathrm{t}\):全圧(Total Pressure)
- \(p_\mathrm{s}\):静圧
- \(p_\mathrm{d}\):動圧
ポイント:配管設計や圧損計算では、全圧の変化を基準にしてエネルギー損失を評価します。
4. 圧損との関係
配管やダクト内では、摩擦や急拡大・縮小、曲がり管によって圧力が失われます。これが「圧損」です。
- 圧損は基本的に動圧を基準に計算されます
\(\Delta P = K \cdot \frac{1}{2} \rho V^2\)
- K:損失係数(管形状や弁、曲がりによる)
- \(\rho\):流体密度
- V:流速
圧損が大きいほど、流体を送り出すための静圧が必要になります。つまり、静圧は配管全体の圧力バランス、動圧は損失評価の基準として考えるとわかりやすいです。
5.圧損計算ツール
圧損を実際に計算するのは大変です。
下記のツールで簡単に計算できるので、ご覧ください。
工学計算ツール集

圧損計算ツールまとめ|直管・曲管・オリフィス・入口出口 直管・急拡大縮小・曲管(エルボ・ベンド)・オリフィス・入口出口の圧損を自動計算できる無料ツールをまとめました。損失係数Kと圧力損失ΔPを簡単に算出可能。
6. まとめ
項目 | 意味 | 役割 |
---|---|---|
静圧 | 流体の運動に依存しない圧力 | 配管の圧力設計の基準 |
動圧 | 流体の運動エネルギーに対応する圧力 | 圧損計算の基準 |
全圧 | 静圧 + 動圧 | 配管内のエネルギー総量の指標 |
圧損を理解するには、静圧・動圧・全圧の関係を押さえることが必須です。摩擦や曲がりによる損失は動圧に比例して増えるため、流速管理と損失評価が配管設計の肝となります。