非定常熱伝導シミュレーター|角材の温度変化を計算

目次

非定常熱伝導とは?

物体の温度が時間とともに変化する現象を「非定常熱伝導」と呼びます。
ホットプレートの上に角材を置いたとき、すぐには全体が温まらず、底面から徐々に熱が伝わっていく ― まさにそれが非定常伝熱の代表例です。

理論背景(ざっくり解説)

◆ 基礎方程式

このシミュレーションは、熱伝導方程式の1次元非定常形に基づいています。

\( \frac{\partial T}{\partial t} = \alpha \frac{\partial^2 T}{\partial x^2}​\)

ここで

  • T:温度 [K]
  • t:時間 [s]
  • \(\alpha = \frac{k}{\rho c}\):熱拡散率 [m²/s]
  • k:熱伝導率
  • \(\rho \):密度
  • c:比熱

これは「温度拡散方程式」と呼ばれるもので、左辺と右辺それぞれに意味があります。

左辺 ∂T/∂t: 時間が1秒進んだときに、ある地点の温度がどれだけ変化するかを表します。「温度の時間変化率」です。
右辺 ∂²T/∂x²: 位置xにおける温度分布の「曲がり具合(2階微分)」を表します。簡単に言うと、その地点の温度が周囲(両隣)の温度に比べて高いか低いかを示す値です。
α(アルファ): 熱拡散率(thermal diffusivity)と呼ばれる物性値で、熱がどれだけ速く伝わりやすいかを表します。
 金属のようにkが大きくρ・cが小さい材質程αが大きくなり、温度変化が速く伝わります。
 逆に木材のようにαが小さい材質は、温度変化がゆっくり伝わります。

◆ 数値解法

実際の数値計算では、この微分方程式を直接解くのではなく、空間を細かいメッシュに分割し、時間をΔtずつ進めながら近似的に解く「差分法」が使われます。たとえば最も基本的な陽解法(FTCS法)では、次のような形で次の時刻の温度を求めます。


今回の計算では、安定条件\(r = \alpha \Delta t / \Delta x^2 < 0.5\) を満たすように、Δtは自動で調整されます

境界条件・初期条件の設定

初期条件

計算を始める瞬間(t=0)の温度分布を決める条件です。
今回のツールでは、角材全体が室温などの均一な温度になっている状態を初期条件として設定します。

\( T(x,0)=T0​(初期温度) \)

境界条件

角材の両端(または表面)が、どのような熱的環境に置かれているかを定義する条件です。代表的なものに次の3種類があります。

  • 第1種境界条件(ディリクレ条件): 境界の温度を直接固定する条件。「ヒーターに接している面は常に〇℃」のように設定する場合に使います。今回のツールではホットプレートに接する面をこの条件で扱っています。
  • 第2種境界条件(ノイマン条件): 境界での熱流束(熱の出入りの量)を固定する条件。断熱面(熱が出入りしない)を表現する場合は、熱流束をゼロに設定します。
  • 第3種境界条件(ロビン条件/対流境界条件): 周囲の空気との対流による熱の出入りを表す条件で、次の式で表されます。

\( −k \frac{\partial T}{\partial x} ​=h(T_{surface}​−T_{air}​) \)

 ここで h は熱伝達率、T_air は周囲の空気温度です。
 角材が空気中にさらされている面では、この対流境界条件を使うのが現実的です。

本シミュレーションでは下記のような境界条件の設定をすることができます。

下端(ホットプレート側)上端(空気側)
第1種境界条件〇(対応)×(未対応)
第2種境界条件〇(対応)〇(対応)
第3種境界条件×(未対応)〇(対応)

シミュレーションツールの使い方

🔶 使い方

  1. 「角材の厚さ」や「ホットプレート温度」を入力
  2. 材質を選択(または手動で物性値を入力)
  3. 「計算開始」を押す
  4. 中央温度・反対側温度が時間とともにどう変化するかをグラフで確認

材質を変えると何が変わるか?

材質を変えると、内部的に熱伝導率k・比熱c_p・密度ρ(つまり熱拡散率α)が切り替わり、グラフの「温度の上がる速さ」が変わります。

手動入力を選択することによって、自分の考える材料の値を直接入力することも可能です。

🔶 結果の見方

  • 赤線:下端の温度
  • 緑線:中央の温度
  • 青線:反対側の端の温度
    材質によって熱伝わり方が大きく異なります。
    たとえばアルミや銅はすぐに全体が温まり、木やプラスチックは時間がかかります。

今回のシミュレーションツールについて

以下のツールでは、ホットプレート上に置いた角材(木・金属・プラスチックなど)の温度分布の時間変化を1次元モデルで計算します。
入力するのは厚さや温度などの基本条件だけ。材質を選ぶと熱伝導率・比熱・密度を自動設定します。
手動入力も可能なので、独自の材料データにも対応しています。

🔧 1次元非定常熱伝導ツール

材質ごとの温度変化

入力条件

上記のような条件でアルミニウムと鉄で比較してみました。

結果

アルミニウムの場合(左):熱伝導が良いので、すぐに温度上昇します。
鉄の場合(右):熱伝導が悪いので、温度上昇に時間がかかります。

まとめ

  • 非定常熱伝導は時間依存の熱の伝わり方を扱う重要な現象。
  • 今回のツールで、材質・厚さ・境界温度による温度応答の違いを可視化できます。
  • 手動入力機能で、研究材料や特殊素材にも対応可能です。

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