はじめに
配管やホース、エアダクトを通じて流体が流れるとき、何が保存されるか知っていますか?
答えは 「質量」 です。
これを数式で表したのが 「連続の式(Continuity Equation)」 です。
流体力学の最も基本的で重要な法則の 1 つであり、ナビエストークス方程式、圧力損失計算、さらには製造業での配管設計まで、あらゆる場面で活用されます。
連続の式が重要な理由
例えば、以下のような場面を考えてください。
ケース 1:配管の太さが変わる場合
- 細い配管(φ10mm)から太い配管(φ20mm)に接続
- 流量は変わらないのに、細い部分では流速が速くなる
- なぜ? → 連続の式で説明できます
ケース 2:ポンプの設計
- 吸い込み側のホース径と吐き出し側のホース径が異なる
- 各部での流速をどう計算する?
- → 連続の式が必要です
ケース 3:空調ダクト設計
- 分岐点で気流を分割したとき、各分岐での流速は?
- → 連続の式から決定されます
このように、流体が流れる配管やダクトのあらゆる設計で、連続の式は避けて通れません。
なお、実配管での流体摩擦による圧力低下を計算する際には、連続の式で求めた流速が必須となります。詳しくは「圧力損失をやさしく解説」
をご覧ください。
この記事の目的
この記事では、以下を解説します。
- 連続の式とは何か(概念)
- 数学的導出(理解の深化)
- 非圧縮流 vs 圧縮流の違い
- 配管系での実例計算
- よくある質問
連続の式とは
定義
連続の式(Continuity Equation) は、流体の 「質量保存の法則」 を数式で表したものです。
簡潔に言うと:
「流れ込む質量 = 流れ出す質量」
これ以上シンプルな定義はありません。
具体的なイメージ
川の流れを想像してください。
川上(入口) 川下(出口)
│ │
▼ ▼
┌─────────┐ ┌─────────┐
│ 断面積A │ 流体流れ │ 断面積A │
│ 流速 v │ ────→ │ 流速 v │
└─────────┘ └─────────┘
単位時間に流入する質量 = 単位時間に流出する質量
ここで 1 秒間に流れる質量を「質量流量」と呼びます。
非圧縮流での連続の式
最も簡単な形
液体(水、油など)は圧縮されません。つまり、密度ρは一定です。
この場合、連続の式は以下のように簡略化されます。
Q₁ = Q₂
または
A₁ v₁ = A₂ v₂
各記号の意味
- Q:流量(m³/s)
- A:配管の断面積(m²)
- v:流速(m/s)
- 添字 1, 2:入口と出口(または異なる位置)
実例で理解する
例 1:配管径が変わる場合
ポンプから流量 Q = 0.6 m³/s で液体が流れています。
吸い込み側配管:直径 D₁ = 0.1 m(φ100mm) 吐き出し側配管:直径 D₂ = 0.05 m(φ50mm)
各配管での流速を計算します。
吸い込み側:
A₁ = π(D₁/2)² = π(0.05)² = 0.00785 m²
v₁ = Q / A₁ = 0.6 / 0.00785 = 76.4 m/s
吐き出し側:
A₂ = π(D₂/2)² = π(0.025)² = 0.00196 m²
v₂ = Q / A₂ = 0.6 / 0.00196 = 305.9 m/s
結果: 配管径が 1/2 に減ると、流速は 4 倍になります。

このように、連続の式から配管内の流速分布が決定されます。
連続の式の導出(理解を深める)
なぜこの式が成り立つのか
微視的に考えると、以下のようになります。
ある制御体積(仮想的なボックス)を考えます。

時間 Δt の間に、入口から流入する質量:
Δm_in = ρ₁ A₁ v₁ Δt
同じ時間に、出口から流出する質量:
Δm_out = ρ₂ A₂ v₂ Δt
質量保存則により(内部で蓄積なし、源・吸い込みなし):
Δm_in = Δm_out
ρ₁ A₁ v₁ Δt = ρ₂ A₂ v₂ Δt
ρ₁ A₁ v₁ = ρ₂ A₂ v₂
これが 「連続の式の一般形」 です。
非圧縮流への簡略化
液体の場合、ρ₁ = ρ₂ = ρ(一定)なので:
A₁ v₁ = A₂ v₂
または質量流量ṁを用いると:
ṁ = ρ Q = 一定
圧縮流での連続の式
気体が関係する場合
空気やガスは圧力・温度の変化で密度が変わります。
この場合、連続の式は以下のようになります。
ṁ = ρ A v = 定数
つまり 「質量流量(kg/s)」は一定ですが、体積流量(m³/s)は変わります。
具体例:コンプレッサーの出口
圧縮機から出る空気を考えます。
吸い込み側(大気圧):
- P₁ = 0.101 MPa(abs)
- T₁ = 25℃ = 298 K
- 流量 Q₁ = 1.0 m³/s(吸込条件)
吐き出し側(圧縮後):
- P₂ = 0.8 MPa(ゲージ圧)= 0.901 MPa(abs)
- T₂ = 50℃ = 323 K
質量流量が保存されるので:
ṁ = ρ₁ Q₁ = ρ₂ Q₂
理想気体の状態方程式から:
ρ = P / (R T)
R は空気の気体定数 287 J/(kg·K)
吸い込み側密度:
ρ₁ = P₁ / (R T₁) = 101000 / (287 × 298) = 1.18 kg/m³
吐き出し側密度:
ρ₂ = P₂ / (R T₂) = 901000 / (287 × 323) = 9.71 kg/m³
質量流量:
ṁ = ρ₁ Q₁ = 1.18 × 1.0 = 1.18 kg/s
吐き出し側の体積流量:
Q₂ = ṁ / ρ₂ = 1.18 / 9.71 = 0.122 m³/s
結果: 吸い込みで 1.0 m³/s だった空気が、圧縮後は 0.122 m³/s に圧縮されました。
質量は保存されていますが、体積は 1/8 以下になります。
配管系での応用例
例 1:T 字配管での分岐
メインの配管から 2 本の配管に分岐する場合を考えます。

または:
A₁ v₁ = A₂ v₂ + A₃ v₃
具体例:
メイン配管:φ50mm、流量 1.0 m³/s 分岐 1:φ30mm 分岐 2:φ30mm
各部の流速を求めます。
メイン:
A₁ = π(0.025)² = 0.001963 m²
v₁ = 1.0 / 0.001963 = 509 m/s
分岐1:
A₂ = π(0.015)² = 0.000707 m²
分岐2:
A₃ = π(0.015)² = 0.000707 m²
流量が等分に分かれると仮定:
Q₂ = Q₃ = 0.5 m³/s
v₂ = 0.5 / 0.000707 = 707 m/s
v₃ = 0.5 / 0.000707 = 707 m/s
例 2:ポンプ前後の配管
ポンプの吸い込みと吐き出しで配管径が異なるケース。
吸い込みホース:φ100mm、内径 95mm(実際) 吐き出しホース:φ40mm、内径 35mm(実際) ポンプ流量:50 L/min = 0.0008333 m³/s
吸い込み側:
A = π(0.0475)² = 0.00709 m²
v = 0.0008333 / 0.00709 = 0.117 m/s
吐き出し側:
A = π(0.0175)² = 0.000962 m²
v = 0.0008333 / 0.000962 = 0.866 m/s
吐き出し側の流速が 7.4 倍になります。
非圧縮流 vs 圧縮流:まとめ
判断基準
非圧縮流と見なせる条件:
マッハ数 Ma < 0.3(音速の 30% 以下)
Ma = v / c
ここで v は流速(m/s)、c は音速(m/s)
空気の音速(20℃):約 340 m/s
例:
- 配管内の液体流れ → 非圧縮(常に)
- 通常のダクト内の空気流れ → 非圧縮(v < 100 m/s なら)
- 高速エアジェット → 圧縮を考慮
- ガスタービン → 圧縮を考慮
よくある質問
Q1:連続の式と「流量保存」の違いは?
A:ほぼ同じ意味です。
- 連続の式:「質量流量が保存される」という原理
- 流量保存:「体積流量が保存される」という表現
非圧縮流の場合は両者が等価ですが、厳密には「質量流量」が基本です。
Q2:実験やシミュレーションで連続の式が満たされないことがある。なぜ?
A:以下の理由が考えられます。
- 測定誤差:流速や断面積の測定が不正確
- 漏れ:配管から液体が漏れている
- 気泡:液体に気泡が混入している
- 圧縮性効果:温度変化で密度が変わった
Q3:圧縮流で「質量流量が一定」なら、なぜ流速が変わるのか?
A:密度が変わるからです。
ṁ = ρ A v
ṁ が一定でも、ρ が変わると A や v が調整される
例えば、圧縮で ρ が 10 倍になれば、同じ質量流量を流すには v を 1/10 にする必要があります。
製造業での活用場面
① 射出成形機の冷却配管設計
金型の冷却水配管で、流量一定の条件下での流速分布を決定。
圧力損失計算に必要な基本式。
② 空調・換気ダクト設計
建物全体の分岐ダクトネットワークで、各支線の流速・流量を決定。
バランス調整の根拠になります。
③ 燃料電池のガス供給系
水素と酸素の供給流量から、各セルでの流速・反応速度を予測。
④ 洗浄液配管の設計
半導体製造での洗浄装置で、ノズルからの吐き出し流量・流速を設計。
よくある計算ミス
ミス 1:流量と流速を混同する
❌ 誤り「この配管の流量は 5 m/s」
✅ 正答「流速が 5 m/s なら、流量は Q = A × v で計算」
流量は「体積/時間」(m³/s)、流速は「距離/時間」(m/s)
ミス 2:断面積を間違える
❌ 誤り:外径φ50mm の配管 → A = π(50)²/4
✅ 正答:内径で計算すべき。外径と厚さから内径を確認
実配管は外径表記が多いので、肉厚を確認して内径を計算してください。
ミス 3:圧縮流で体積流量が保存されると思う
❌ 誤り「気体は圧縮されるから、体積流量は変わらない」
✅ 正答「質量流量は保存。体積流量は密度変化で変わる」
連続の式の数学的形式(参考)
微分形式
制御体積内での質量保存は以下の偏微分方程式で表現されます。
∂ρ/∂t + ∇·(ρv) = 0
ここで:
- ρ:密度(kg/m³)
- t:時間(s)
- v:流速ベクトル(m/s)
- ∇·:ダイバージェンス演算子
定常流(∂ρ/∂t = 0)で非圧縮流(ρ = 定数)の場合:
∇·v = 0
積分形式
制御体積V に対し、質量保存則は:
d/dt ∫∫∫ ρ dV = -∮ ρ(v·n) dA
これが「連続の式」の最も一般的な形です。
ナビエストークス方程式との関係
連続の式は、ナビエストークス方程式と組み合わせて、流体の挙動を完全に記述します。
連続の式: 質量保存
↓
ナビエストークス:運動量保存
↓
エネルギー方程式:エネルギー保存
これら 3 つの方程式を同時に解くことで、流れ場の速度・圧力・温度分布が求まります。
まとめ
連続の式は、流体力学の最も基本的で重要な法則です。
要点
- 連続の式 = 質量保存の法則
- 非圧縮流(液体):A₁v₁ = A₂v₂
- 圧縮流(気体):ρ₁A₁v₁ = ρ₂A₂v₂
- 配管・ダクト設計で必ず必要
応用範囲
- 配管系の流速計算
- ポンプ・コンプレッサー設計
- 空調ダクト設計
- CAE 解析の基礎方程式
次に学ぶべき内容
- ベルヌーイの式(圧力と流速の関係)
- ナビエストークス方程式(流体運動の詳細)
- 圧力損失計算(実配管での圧力低下)
連続の式は、これらすべての基盤となります。流体力学を学ぶなら、まずはこの式を確実に理解することが大切です。

