静圧と動圧とは?圧損計算との関係も解説

目次

はじめに

配管・ダクトの設計や流体工学の計算では、「圧力」という言葉がいくつかの異なる意味で使われます。中でも静圧・動圧・全圧の3つは、圧損計算やファン・ポンプの選定において基礎となる重要な概念です。

この3つを混同していると、「圧損計算の式の意味が分からない」「ベルヌーイの定理と圧損の関係が結びつかない」という状態になりやすいです。このページでは3つの圧力の違いと関係を、具体的なイメージと数式で丁寧に解説します。


静圧とは?

静圧の定義と単位

静圧(Static Pressure) は、流体が持つ運動に依存しない圧力です。流体が静止していても存在し、流体の分子が周囲のあらゆる方向に力を及ぼすことで生じます。

単位はPa(パスカル)またはkPaで、1 Pa = 1 N/m²です。

静圧のイメージ・計測方法

静圧を直感的にイメージするには、「配管の壁面に直角に開けた小穴(タップ穴)で測れる圧力」と考えると分かりやすいです。流れの方向に対して垂直な向きで計測するため、流体の勢い(速度)の影響を受けず、流体が「壁を押す力」だけを測れます。

配管設計では、ポンプやファンが生み出す静圧が配管全体の静圧損失を上回ることが必要です。静圧が不足すると流量が設計値を下回り、システムが正常に機能しません。


動圧とは

動圧(Dynamic Pressure)は、流体の運動エネルギーに相当する圧力です。流速 V がある流体が持つ圧力で、以下の式で表されます。

\(p_\mathrm{d} = \frac{1}{2} \rho V^2\)

  • \(\rho\):流体密度 [kg/m³]
  • V:流速 [m/s]

動圧は流速の2乗に比例するため、流速が2倍になると動圧は4倍になります。例えば空気(ρ≈1.2 kg/m³)が5 m/sで流れているとき、動圧は 12×1.2×25=15\frac{1}{2} \times 1.2 \times 25 = 15Paです。

動圧のイメージ・計測方法

動圧は「正面から流れを受け止めたときに感じる力」です。風を顔に受けるときに感じる「風圧」が動圧に相当するイメージです。

計測方法としては、流れに正面を向けたピトー管で全圧を測り、タップ穴で静圧を測って、その差が動圧になります。pd=ptpsp_d = p_t – p_s


全圧とは?(静圧+動圧)

流体が持つ圧力の総エネルギーは、静圧と動圧の和として表されます。

\(p_\mathrm{t} = p_\mathrm{s} + p_\mathrm{d}\)

  • \(p_\mathrm{t}\):全圧(Total Pressure)
  • \(p_\mathrm{s}\)​:静圧
  • \(p_\mathrm{d}\)​:動圧

全圧は流体が持つ「圧力エネルギーの総量」を表しています。ピトー管を流れの正面に向けることで全圧を直接計測できます。

ベルヌーイの定理との関係

エネルギー損失のない理想的な流れでは、流線上のどの点でも全圧が一定に保たれます。これがベルヌーイの定理です。ps+12ρV2+ρgh=一定p_s + \frac{1}{2}\rho V^2 + \rho g h = \text{一定}

水平な配管(高さhが一定)では ps+12ρV2=一定p_s + \frac{1}{2}\rho V^2 = \text{一定} となり、流速が増えると動圧が増える分だけ静圧が下がるというトレードオフの関係になります。

ベルヌーイの定理の詳しい解説(飛行機の翼・ベンチュリ管などの応用例を含む)は、こちらの記事をご参照ください。

→ ベルヌーイの定理とは?流速・圧力・高さの関係をわかりやすく解説

断面変化で静圧・動圧はどう変わる?

細い管→太い管(拡大)の場合

断面積が大きくなると、連続の式(質量保存則)から流速は低下します。A1V1=A2V2V2<V1A2>A1のとき)A_1 V_1 = A_2 V_2 \Rightarrow V_2 < V_1 \text{(} A_2 > A_1 \text{のとき)}

流速が下がると動圧 12ρV2\frac{1}{2}\rho V^2が減少します。エネルギー損失がなければその分だけ静圧が増加します。ただし実際には急拡大では渦・乱れによるエネルギー損失が生じるため、全圧は損失分だけ低下します。

太い管→細い管(縮小)の場合

断面積が小さくなると流速は増加し、動圧が増えて静圧が低下します。この断面変化での静圧・動圧の変化の理解は、オリフィス流量計の原理(流速増加→静圧低下→差圧から流量を計算)にも直接つながります。


圧損との関係

圧損とは全圧の損失

圧損(圧力損失)は、流れがエネルギーを失うことで全圧が低下する現象です。ベルヌーイの定理では全圧が一定でしたが、現実の流れでは摩擦・渦・乱れによってエネルギーが熱として失われます。この失われた全圧の分が「圧力損失ΔP」です。ΔP=pt,入口pt,出口\Delta P = p_{t,\text{入口}} – p_{t,\text{出口}}

圧損計算に動圧が使われる理由

圧損計算では次の式が使われます。

\(\Delta P = K \cdot \frac{1}{2} \rho V^2 = K \cdot p_{d} \)

  • K:損失係数(管形状や弁、曲がりによる)
  • \(\rho\):流体密度
  • V:流速
  • \( p_{d} \):動圧

損失係数Kを動圧 pdp_dに掛けることで圧損を計算するのは、エネルギー損失の大きさが流体の持つ運動エネルギー(動圧)に比例するからです。Kが大きいほど、また流速が速くて動圧が大きいほど、失われるエネルギーも大きくなります

各形状の損失係数Kと圧力損失ΔPの計算は、以下のツールで自動計算できます。

→ 圧損計算ツールまとめ|直管・曲管・オリフィス・急拡大縮小・入口出口


まとめ

項目定義計算式役割
静圧 psp_s流体の運動に依存しない圧力タップ穴で直接計測配管内の圧力設計の基準
動圧 pdp_d流体の運動エネルギーに対応する圧力12ρV2\frac{1}{2}\rho V^2圧損計算・流速評価の基準
全圧 ptp_t静圧+動圧ps+pdp_s + p_dエネルギー総量の指標
圧損 ΔP\Delta P全圧の低下量KpdK \cdot p_d損失エネルギーの評価

静圧・動圧・全圧の関係を理解すると、「なぜ圧損式がKと動圧の積で表されるのか」「なぜ断面が変わると静圧が変化するのか」が自然に分かるようになります。


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