はじめに
配管やダクトの設計では、直管部・曲管部・急拡大縮小部などの圧損と並んで、見落とされがちなのが入口部分での圧損です。タンクや大気から配管へ流体が流入する際、流体は急激に加速・収縮するためにエネルギーを消費します。この損失が「入口圧損」です。
入口形状の設計次第でK値は大きく変わり、適切な形状を選ぶことで入口圧損を大幅に低減することができます。このページでは、入口圧損の発生メカニズム、形状ごとの損失係数K、計算式、そして自動計算ツールを紹介します。
入口圧損とは?
タンクや大空間から配管・ダクトへ流体が流入するとき、流体は静止または低速の状態から管内の流速まで急激に加速します。この加速に伴い、流線が収縮・屈曲して乱れが生じ、運動エネルギーの一部が熱として失われます。この損失を**入口損失(入口圧損)**と呼びます。
入口圧損は直管の摩擦損失とは性質が異なり、配管の長さには依存しません。短い配管や接続部が多いシステムでは、入口損失が全体の圧損に占める割合が相対的に大きくなることがあるため、精度の高い圧損計算では必ず考慮が必要です。
なぜ入口で圧損が生じるのか?
入口圧損が発生する主なメカニズムは以下の2点です。
1. 流れの縮流(vena contracta)
流体が入口を通過する際、慣性によって流れは入口断面よりも内側に絞られ、「縮流部」を形成します。縮流部を過ぎると流れが再拡大しますが、この拡大過程で渦が発生し、エネルギーが失われます。この現象は急縮小の圧損と同じメカニズムです。
2. 入口形状による流線の乱れ
入口が角端(シャープエッジ)の場合、角部で流線が急に曲がるために強い縮流が生じ、損失が大きくなります。一方、ベルマウスのように滑らかに広がった形状では流線が自然に絞られるため縮流が抑えられ、損失が非常に小さくなります。つまり入口形状の工夫によって圧損を大幅に減らすことができます。
圧損の計算式
入口圧損は次の式で計算します。
\(\Delta P =K×\frac{1}{2} \rho v^2 \)
ここで、
- \(\Delta P:入口圧損(Pa)\)
- \(K:入口損失係数\)
- \(\rho:流体密度(kg/m³)\)
- \(V:管内流速(m/s)\)
動圧 に損失係数Kを掛けた形は、曲管・急拡大縮小など他の局所損失の計算式と同じ構造です。Kが決まれば、あとは流体の密度と流速だけで計算できます。
流体の密度が分からない場合は、流体の密度・粘度一覧表を参照してください。
入口損失係数Kと形状の関係
形状ごとのK値一覧
入口の形状によって損失係数Kは大きく異なります。以下は代表的な形状のK値目安です。
形状
入口損失係数K

角端
K=0.5

隅切り
K=0.25

丸み付き
K=0.1~0.2

ベルマウス
K=0.01~0.05

突き出し
K=1.0~3.0

傾斜
式で計算(後述)
形状を選ぶ際のポイントは以下の通りです。
- エネルギー効率を重視する場合: ベルマウス形状が最もKが小さく、入口損失を最小化できます。大型の送風機・ポンプの吸込口や風洞実験装置などで使われます。
- 加工コスト・スペースを重視する場合: 丸み付きや隅切りで、角端より大幅にKを下げることができます。
- 突き出し(再入管)に注意: 管が壁から内側に突き出している形状(バルジ管)では、K値が1.0を超えることがあります。これは管内に流れが一度入ってから再拡大するためで、タンク配管の設計では特に注意が必要です。
傾斜入口のK値の計算式
入口が斜めにカットされた傾斜入口のK値は、傾斜角度θ(管軸に対する角度)によって次の式で計算します。
- (垂直カット、通常の角端)のとき:
- (管軸に平行カット)のとき:
θが大きくなるほど(より斜めになるほど)Kが小さくなる傾向があります。ただし傾斜角度が大きい場合は縮流の形状が複雑になるため、あくまで目安として扱うことを推奨します。
ツールの使い方
入力項目の説明
| 入力項目 | 説明 |
|---|---|
| 入口形状 | 角端・丸み付き・ベルマウス・隅切り・突き出し・傾斜から選択 |
| 傾斜角度θ | 傾斜入口を選択した場合のみ入力 [度] |
| 管の寸法 | 配管の内径または断面寸法 [mm] |
| 流体の種類 | 空気・水など選択(密度が自動入力) |
| 流量または流速 | 体積流量 [m³/s] または流速 [m/s] で入力 |
計算結果の見方
計算ボタンを押すと以下の結果が表示されます。
- 損失係数K: 選択した形状から算出されたK値
- 流速V [m/s]: 管内の平均流速
- 入口圧損ΔP [Pa]: 入口部分で発生する圧力損失
形状を切り替えながら計算することで、「ベルマウスに変えるとどれだけ圧損が下がるか」といった形状選定の比較にも活用できます。
入口圧損 計算ツール
以下のフォームに入力することで、K値と入口圧損ΔPを自動計算できます。
まとめ
入口圧損は、配管設計や送風機・ポンプの動力計算に大きく影響する要素です。
入口形状を工夫するだけで圧損を大きく低減できるため、設計初期段階からの考慮が重要です。
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