急拡大・急縮小の圧力損失とは?
配管やダクトの設計において、断面が急に変化する箇所(急拡大・急縮小)は、意外と大きな圧力損失を生みます。圧力損失が大きほど、ポンプや送風機がより多くのエネルギーを必要とするため、システム全体の消費電力や設備コストに直接影響します。
直管部の圧損と異なり、急拡大・急縮小による圧損は「局所損失」と呼ばれ、流れの乱れや渦の発生によって引き起こされます。配管設計では直管部の摩擦損失だけでなく、こうした局所損失も合わせて計算することが重要です。
このページでは、急拡大・急縮小で圧損が発生するメカニズム、損失係数Kを使った計算式、そして実際に試せる計算ツールを紹介します。
なぜ断面変化で圧損が生じる?
急拡大の場合
流体が狭い断面から広い断面へ急激に拡大すると、流れは広がった空間に一気に解放されます。このとき流れの中心部は高速のまま前進しますが、周囲の空間では流体が追いつけず、壁面付近で大きな渦(再循環流)が生じます。この渦がエネルギーを熱として散逸させるため、圧力損失が発生します。
急拡大の圧損は「ボルダ・カルノーの損失」とも呼ばれ、理論的に導出できる局所損失の代表例です。

急縮小の場合
流体が広い断面から狭い断面へ急激に縮小すると、流れが絞られて流速が上昇します。このとき流れは慣性のために断面の縮小に追いつけず、絞り部のやや下流で「縮流(vena contracta)」と呼ばれる最も断面が絞られた部分を形成します。縮流部を過ぎると流れが再び広がり、その拡大過程で渦が発生してエネルギーが失われます。
急縮小の圧損は急拡大と比べて小さくなる傾向がありますが、無視できない値になることも多いため、設計では両方を考慮することが重要です。

圧損の計算式(損失係数を用いる)
急拡大・急縮小による圧損は、損失係数Kを用いた次の式で計算します。
\(\Delta P = K \cdot \frac{1}{2} \rho V^2\)
- \(\Delta P \):圧力損失 [Pa]
- \(K \):損失係数(形状により異なる)
- \(\rho \):密度 [kg/m^3]
- \(V^2 \):代表流速(急拡大なら入口、急縮小なら出口) [m/s]
この式の構造は直管の圧損式と同じで、動圧 に損失係数Kを掛けたものが圧力損失になります。つまりKが大きいほど、また流速が速いほど、圧力損失は大きくなります。
損失係数 K (ボルダ・カルノー損失)
上流側の配管の面積を\(A_1 \)、下流側の配管の面積を\(A_2 \)とすると、それぞれのKは次のようになることが知られています。
急拡大
\(K = \left(1 – \frac{A_1}{A_2} \right)^2\)
急縮小
\( K = \left( 1- \frac{1}{ \alpha} \right)^2 \)、 \( \alpha = 0.63 +0.37 \left(\frac{A_2}{A_1} \right)^3 \)
急縮小のαは、縮流の効果を補正するための係数です。(面積比)が小さいほど縮流が強くなり、αが小さくなってKが大きくなります。
急拡大と急縮小でKはどう違う?
同じ面積比でも、急拡大と急縮小ではKの値が異なります。
例として (急拡大)と =2:1(急縮小)で比較してみます。
急拡大(A1/A2=0.5):
急縮小(A2/A1=0.5):
このように、同程度の面積比では急縮小の方がKがやや小さくなる傾向があります。ただし代表流速が異なる(急拡大は入口の速い流速、急縮小は出口の速い流速)ため、実際の圧力損失ΔPを比較する場合は流速条件にも注意が必要です。
ツールの使い方
入力項目の説明
| 入力項目 | 説明 |
|---|---|
| 計算の種類 | 急拡大・急縮小のどちらを計算するか選択 |
| 上流側の直径または寸法 | 流体が入ってくる側の配管の寸法 [mm] |
| 下流側の直径または寸法 | 流体が出ていく側の配管の寸法 [mm] |
| 断面形状 | 円形・長方形・台形から選択 |
| 流量 | 配管内を流れる体積流量 [m³/s または L/min] |
| 流体の密度 | 流体の種類に応じた密度 [kg/m³] |
流体の密度が分からない場合は、流体の密度・粘度一覧表を参照してください。
計算結果の見方
計算ボタンを押すと、以下の結果が表示されます。
- 損失係数K: 入力した形状から算出された値。設計の比較・検討に使えます
- 代表流速V [m/s]: 損失係数の基準となる流速
- 圧力損失ΔP [Pa]: 実際に配管設計で使う値
Kの値を参考にしながら、上流・下流の断面積比を変えると圧損がどう変わるかを試してみると、設計の感覚がつかみやすくなります。
🔧実際に計算してみましょう(計算ツール)
以下のツールを使えば、必要な項目を入力するだけで急拡大・急縮小の圧損がすぐに分かります。
計算例
計算条件
流体:空気
断面形状:長方形
上流:幅1mm,高さ1mm
下流:幅0.5mm,高さ0.5mm
上流流量:1L/min
結果
ΔP=54.696Paとなります。
流体の密度・粘度一覧について
圧損計算を行う際には、流体の密度や粘度が重要なパラメータとなります。
本ツールでは代表的な流体を選択できるようにしていますが、より多くの流体や数値を確認したい場合は、下記の記事をご参照ください。
圧損計算と合わせて参照することで、実際の条件に近い値で計算でき、より正確な結果が得られます。
結果の見方と考察
ツールの結果に出てくる「損失係数 K」は、設計段階で重要な目安になります。
- Kが大きい → 圧損が大きく、効率が悪化
- Kが小さい → 流れがスムーズ
例えば、同じ流速でも急拡大によって K = 0.36、急縮小では K = 0.25 になることもあります。
圧損計算
様々な圧損の計算の仕方やツールについては、下記のリンクにてまとめています。

関連リンク・参考資料
まとめ
急拡大・急縮小の圧損は、設計において意外に見落とされがちですが、エネルギー効率に大きな影響を与えます。
簡易な計算ツールを活用することで、設計の初期段階でもスピーディに損失評価ができます。配管やダクト設計の見直しに、ぜひお役立てください。

